• 2026年8月29日
  • 2026年8月24日

血圧の薬は一度飲んだら一生ですか?|学会の解説と家庭血圧の測り方【瑞浪市】

「血圧の薬は、一度飲み始めたらもうやめられないんですよね?」

外来でとてもよくいただく質問です。答えは、必ずしもそうではありません。

学会の解説にはこう書かれています

日本高血圧学会・日本高血圧協会が作成した一般向けの解説冊子(2019年)には、次の記載があります。

Ⅰ度の高血圧では、1剤で低用量の場合、20〜30%の患者さんで降圧薬をやめることができます

裏を返せば、残りの7〜8割の方は続けたほうがよいということでもあります。実際、外来でも「やめられました」という方より「続けています」という方のほうがはるかに多いのが現実です。

ただし、同じ冊子にこうも書かれています。

勝手に薬を減量・中止することは危険です。主治医とよく相談するようにしましょう

やめられる方はいる。ただし自己判断ではやらない。 この2つはセットで理解する必要があります。

条件も限定的です。「Ⅰ度の高血圧(比較的軽い段階)」で「1剤・低用量」の場合の話であり、複数の薬を使っている方や、糖尿病・腎臓病・心臓の病気をお持ちの方には当てはまりません。

減量を考えられるのはどんなときか

現実的には、次のような変化があったときに検討します。

  • 体重が減った
  • 減塩が定着した
  • 運動の習慣がついた
  • 禁煙した
  • 季節的に血圧が下がる時期に入った(一般に夏は下がりやすくなります)

こうしたときに、家庭血圧が安定して低い状態が続いていれば、減量を試してみる価値があります。減らしたあとも血圧を測り続け、上がってくれば戻します。

逆に、寒くなる時期は血圧が上がりやすいので、その時期の減薬は慎重に考えます。

まずは家庭血圧を測ってください

高血圧の基準は次のとおりです。

  • 診察室で測って 140/90mmHg以上
  • 家庭で測って 135/85mmHg以上

診察室では緊張で高く出る方(白衣高血圧)、逆に診察室では正常でも家庭では高い方(仮面高血圧)がいます。そのため、家庭で測った血圧のほうが診断や薬の調整に役立ちます。

測り方の目安です。

… 起床後1時間以内、排尿を済ませてから、朝の薬を飲む前・朝食前 … 就寝前

いずれも、座って背もたれに寄りかかり、腕を心臓の高さにして、1〜2分安静にしてから測ります。上腕で測るタイプの血圧計をお勧めします。

1回の数値に一喜一憂する必要はありません。1〜2週間分の平均で判断します。

血圧手帳をお持ちください

減らせるかどうかは、家庭血圧の記録があると格段に判断しやすくなります。血圧手帳でもアプリでも構いませんので、記録をお持ちください。

「減らせないか一度相談したい」という方も歓迎します。結果として「いまは続けたほうがよい」となることもありますが、その理由もあわせてご説明します。

2025年の改訂で「目標」が変わりました

日本高血圧学会の『高血圧管理・治療ガイドライン2025』では、高血圧と診断する基準(診察室140/90mmHg以上、家庭135/85mmHg以上)は据え置かれました。 変わったのは「下げる目標」のほうです。

  • 降圧目標:診察室 130/80mmHg未満/家庭 125/75mmHg未満(原則として全年齢で統一)

2019年版では75歳以上は140/90mmHg未満という年齢別の目標がありましたが、今回はそれがなくなりました。ただし、ふらつき・立ちくらみなどがある方では安全を優先して個別に調整します。

あわせて血圧値の分類も整理され、正常血圧は120/80mmHg未満、130〜139/80〜89mmHgは「高値血圧」とされました。120/80mmHg以上のすべての方を血圧管理の対象とする、という考え方が示されています。

つまり、診断の線引きは140/90から、治療の目標は130/80未満。この2つの数字がずれているのが、今回の改訂でわかりにくくなった点です。「140を超えていないから大丈夫」ではなく、「130/80を目指す」が現在の考え方になります。

ご自身の目標値は、年齢・合併症・ふらつきの有無などによって変わります。診察時にご確認ください。

よくある質問

Q. 薬を飲むと、血管が薬に慣れてしまいませんか? A. そういうことはありません。薬をやめて血圧が上がるのは、もともとの高血圧が続いているためです。

Q. 家庭の血圧計と診察室で数値が違います。 A. よくあることです。両方の数値を見て判断しますので、記録をお持ちください。

Q. 調子が良いので自分でやめてしまいました。 A. 責める話ではありませんが、血圧が上がっていないか確認させてください。自己判断での中止は脳卒中や心筋梗塞のリスクにつながります。


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参考文献

  1. 日本高血圧学会・日本高血圧協会編 一般向け「高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子(2019年10月25日)
  2. 日本高血圧学会『高血圧管理・治療ガイドライン2025』(2025年8月29日発行)
  3. 厚生労働省「令和6年 国民健康・栄養調査」

この記事は一般的な医学情報をまとめたもので、個別の診断や治療方針を示すものではありません。治療を変更する際は必ず主治医とご相談ください。

記事監修:院長 大竹宏輝(日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医)

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