• 2026年8月12日

HbA1cの目標値は人によって違います|「7%未満」がすべてではない理由【瑞浪市の糖尿病内科】

外来で「HbA1cは7%を切らないといけないんですよね」とうかがうことがあります。よく知られた数字ですが、これはすべての方に当てはまる目標ではありません。

目標は3段階あります

日本糖尿病学会は、血糖コントロールの目標を3つ示しています。

目標 HbA1c
血糖正常化を目指す際の目標 6.0%未満
合併症予防のための目標 7.0%未満
治療強化が困難な際の目標 8.0%未満

7.0%未満に対応する血糖値の目安は、空腹時130mg/dL未満、食後2時間180mg/dL未満とされています。

そして学会の注釈には、6.0%未満は「適切な食事療法や運動療法だけで達成可能な場合、または薬物療法中でも低血糖などの副作用なく達成可能な場合の目標」、8.0%未満は「低血糖などの副作用、その他の理由で治療の強化が難しい場合の目標」と書かれています。つまり、どの段階を目指すかは、その方の状況によって変わるということです。

出典:日本糖尿病学会編『糖尿病治療ガイド2024』/『糖尿病診療ガイドライン2024』

高齢の方には「下限」が設けられています

もうひとつ、あまり知られていない話をします。

日本老年医学会と日本糖尿病学会の合同委員会は、高齢者糖尿病の血糖コントロール目標を定めています。ここで特徴的なのが、インスリン・SU薬・グリニド薬など「重症低血糖が危惧される薬剤」を使っている場合に、目標に下限値が設定されていることです。

たとえば認知機能が正常でADLが自立している方(カテゴリーI)でも、

  • 65〜74歳:7.5%未満(下限 6.5%
  • 75歳以上:8.0%未満(下限 7.0%

とされています。これらの薬を使っていない場合は7.0%未満が目標です。

「下げれば下げるほど良い」ではなく、下げすぎないことも目標のうち、というのが学会の考え方です。

出典:日本老年医学会・日本糖尿病学会 合同委員会「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標」2016年

なぜ「下げすぎない」ことが目標になるのか

低血糖、特に重症低血糖は、それ自体がつらいだけでなく、転倒・骨折や、その後の心血管疾患・認知症の発症リスクとも関連することが報告されています。『糖尿病診療ガイドライン2024』には、低血糖のある高齢者糖尿病の認知症発症リスクは低血糖のない場合と比較して約1.5倍、低血糖後の転倒関連骨折リスクは約1.7倍という記載があります。

また、日本糖尿病学会の全国調査(2017年報告)では、重症低血糖で救急受診した2型糖尿病の方の年齢の中央値は77歳、HbA1cの中央値は6.8%でした。数字の上では良好にみえる高齢の方に起きている、ということです。

いまの目標値は、ご自身に合っていますか

目標は、年齢・糖尿病歴の長さ・合併症の有無・低血糖のリスク・お仕事や生活の状況・ご家族のサポート体制などをふまえて、一人ひとり決めるものです。一度決めたら変わらないものでもなく、年齢や状況が変わればあわせて見直します。

「昔からずっと同じ数字を言われている」「いまの目標が自分に合っているのかわからない」という方は、一度ご相談ください。他院に通院中の方のご相談も受けています。

よくある質問

Q. HbA1cが目標を超えていると、すぐに薬が増えますか? A. 必ずしもそうではありません。まず食事・運動の状況、低血糖の有無、他の薬との兼ね合いを確認します。目標そのものを見直したほうがよい場合もあります。

Q. 高齢だと、あまり厳しくしなくてよいのですか? A. 「厳しくしない」というより、低血糖のリスクとのバランスで決めます。使っている薬の種類によって目標も下限も変わりますので、お薬手帳をお持ちください。

Q. 数字が良いのに調子が悪いことがあります。 A. 低血糖を繰り返していると平均値は良く見えることがあります。血糖の動きを確認したほうがよい場合がありますので、ご相談ください。


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参考文献

  1. 日本糖尿病学会編『糖尿病治療ガイド2024』/『糖尿病診療ガイドライン2024』
  2. 日本老年医学会・日本糖尿病学会 合同委員会「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標」2016年5月20日
  3. 日本糖尿病学会「糖尿病治療に関連した重症低血糖の調査委員会報告」糖尿病 60(12):826, 2017

この記事は一般的な医学情報をまとめたもので、個別の診断や治療方針を示すものではありません。治療を変更する際は必ず主治医とご相談ください。

記事監修:院長 大竹宏輝(日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医)

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